Project Story

プロフェッショナル達のストーリー 電調式フロントフォーク・リアクッションユニットの開発 KYBモーターサイクルサスペンション㈱ 技術部 吉本 勉
ニーズに応えるモノづくり
海外製品を超える品質と性能を目指して

電気仕掛けのサスペンションに関しては、海外のメーカーで先行しているものがあったのですが、今後さらに需要が伸びていくだろうという予測のもとに、開発が決定しました。後発ではありますが、従来のものよりもいいものを提供したいという思いがありました。国内のメーカーの中ではカヤバが先駆けということになります。 今回は競合する製品がすでに市場にありましたので、その製品を徹底的に調査するところから開発が始まりました。まず性能を調べて、それに対する目標値を設定します。当然既存品よりも良い性能を出すことが課題となりますから、設定値も必然的に高くなります。 また、2輪は数が少ないので、コストの面からも新しく部品をつくるというのは難しい。既存のものをどうアレンジするかがポイントになります。いちばん苦労したのは、やはり開発期間の問題です。後発ということで、一刻も早く世の中に出したいという思いがありますから、まったくのゼロからはじめて、量産立ち上げまで2年という、非常に短い期間での勝負となりました。 開発期間が短い場合、基礎開発をしながら量産開発もするというバランスがむずかしい。実際に作ってもらう工場サイドとの折衝、部品の調達等、当社のスタッフと共同で開発を担当していただいたお客様の協力を得て、なんとかぎりぎり完成させることができました。

写真:吉本勉さん
コストに見合う部品を探し出す
性能に対する技術屋としてのこだわり

開発途中の基礎固めの段階で要となったのは、電調に使うモータでした。前述したように新しい部品を作るというのは難しいですから、どこからそれを探し出すかというのが大事になってくる。しかも、目標とする性能を保ちつつコストに見合う部品を探し出すとなると至難の業です。 今回使用したモータは、実は車のパワーウィンドウ用のモータなのですが、使用用途がまったく違うので、当然メーカーは保証してくれません。まず耐震性、耐久性の問題をクリアするところからスタートしました。最終的には、必要な性能と形状を満たしているか、さらに流通コストは見合っているのかといった点が検討され、最終的にこの部品が選ばれたのです。 性能としてもっともこだわったのは、バイクに乗ったまま調整できるかどうかという点です。開発の参考にした製品は、一旦バイクを降りないと調整ができない。これでは満足してもらえないだろうということで、乗ったまま調整できるよう細かい部分を徹底して見直しました。 実際には油圧で作動しているので、パスカルの定理でそのピストンの面積比を調整したり、モータとピストンの間の機械的な機構の抵抗を最小限にしてロスを減らしたりと、さまざまなことに挑戦しました。 最終的に量産に向けた審査会でOKをもらい、やっと完成です。達成感というよりは、乗り越えた感ですかね。実際にこの製品を搭載したバイクが世に出て、それを目にしたときに初めて達成感を覚えるのかなと思います。

やりがいを見出したいのなら「有言実行」
言われたことをやっているだけではつまらない

カヤバは風通しの良い会社だと思っています。社員が「有言実行」で物事を進めていれば「やりたい」と口に出したことを止める人間はあまりいません。ただし、そのためにはこなさなければいけない業務はもちろんあります。せっかく車やバイク、またモノづくりが好きでカヤバに入社したのに、言われたことをやっているだけではつまらないでしょう。 後進の指導にあたり、若い人にも良い意味で自己主張をしてもらい、自分はこういうものを作りたいとか、もっと仕組みを変えたいといった気概を持って仕事にあたってもらえるようにしたいと思っています。次世代をけん引する開発品を世に送り出してもらいたいですね。

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